2022.06.09

 

「世界公正仮説」

ってご存じですか?

 

wikipediaを見てみると、

 

公正世界仮説(こうせいせかいかせつ、just-world hypothesis)とは、

人間の行いに対して公正な結果が返ってくるものである、

と考える認知バイアス、もしくは思い込みである。

(一部抜粋)

 

と書かれています。

 

 

「因果応報」「自業自得」といった慣用句や

「努力は裏切らない」「正義は必ず勝つ」といった一見ポジティブな標語も、

この世界公正仮説に基づいています。

 

 

私は性教育以外に

「子どもの事故予防(特に交通事故)」

をライフワークにしているのですが、

最近、交通事故被害者遺族がSNSで誹謗中傷を受けたことがニュースになりました。

 

どう考えても何の落ち度もないのに、

なぜ理不尽な被害を受けた被害者遺族を誹謗中傷するのか。

 

 

似たようなことは、病気の患者さんに対してもあります。

 

「どうせ不摂生な生活をしていたんだ」

「ものすごいヘビースモーカーらしい」

 

大好きな作家、さくらももこさんが乳がんで亡くなった時も、

そのような言葉をネット上で見ました。

 

私はさくらももこさんのエッセイが大好きで、小学生の頃から熟読していたのですが、

そこではさくらさんの「健康オタク」としてのエピソードがいくつも紹介されていました。

 

 

全然事実に基づかない話を、どうしてこうも信じたがる人がいるのだろうか。

明らかに落ち度のない人を責め立てるのはどういった心理なのか。

と考える中で、世界公正仮説の存在を知って、スッと腑に落ちたのです。

 

 

この世は清く正しく生きれば、必ず報われる

悪いことをしなければ、理不尽な目には遭わない

 

 

そう信じていたい人にとって、

「何の落ち度もない人が、理不尽な目に遭う」

「どれだけ正しく生きていても、報われないこともたくさんある」

というこの世界の現実は恐怖でしかありません。

 

なので、そういった被害者の人に対して

「実は何らかの悪行(落ち度)があったに違いない」

と勝手に決めつけて攻撃することで、

自分の不安や恐怖を和らげようとしているのでしょう。

 

 

少し前に、とても不幸な窒息事故で亡くなった子どもに対して、

「こんな亡くなり方をするなんて、前世で悪い行いがあったに違いない」

と言っている人がいました。

世界公正仮説、ここに極まれり。

前世まで含めだしたら、もはや何でもアリですよね。

 

 

 

ただ道を歩いていただけで、クルマが突っ込んできて命を奪われる

健康的な生活をしていても、重い病気にかかって辛い思いをする

 

 

自分や自分の大切な存在が、今日明日にもそうなってしまうかもしれない。

 

怖くてたまらない。目をそむけたくなるような理不尽な現実です。

 

 

「大丈夫。正しく生きていたらそんなことは起こりっこない」

と信じようとするのは、ある意味心の平穏を保つための正常な反応なのかもしれません。

 

 

一方で、それは現実の理不尽から目をそらし、思考停止することでもあります。

 

 

この世にあふれている理不尽を何とか解決すべく、

現実を見て、変えられることを変える努力をする人間でありたいものです。